「HOME18岡山」のブログ

 18トリソミーなど染色体少数派の子と、家族と、ゆかいな仲間たちの岡山会です。

18っこ 胡花ちゃんレポート2020 ――月に1度のある通院日――

はじめに

 今回は「HOME18岡山」のメンバーの一人、18っこの胡花ちゃんのことをご紹介します。

このブログをご覧になっている方は、どんなことが気になりますか。

 

A:18っこを授かった方は、

「18っことの生活って、どんな感じだろう?」

「18っことのお出かけって、大変なのかな?」

「そもそも18っこって、生きて生まれてきたとしても、本当にNICUやGCUや小児病棟を退院できるの?」

ということが気になるのではありませんか。

 

B:18っこや医療的ケア児とこれまで接点がなかった方は、

「外出先でバギー(子ども用車椅子・外出用座位保持椅子)に乗ったお子さん連れに出会った時、どのように接したいいのかな?」

「じろじろ見たら感じ悪いだろうけれど、目をそらすのも違う気がするし。

何かお手伝いしたいけれど、話しかけてほしくないと思っているかも知れないし。

どう接したらご家族は助かるのかな? 『助ける』なんておこがましいのかな? 

せめて不愉快に思われないためにはどうしたらいいのかな?」

 

ということが気になるのではありませんか。

 

 目次

 

 

私(惟母)は2019年2月に、お腹の赤ちゃん(惟)が18トリソミーだと分かるまでは、「B」でした。そして、分かった途端に「B+A」となりました。

2019年7月に当時5歳の胡花ちゃんと出会った時からは、「B<A」という具合にますます気になっていました。

(ちなみに、未だに「B」の戸惑いの気持ちはあります。そして18っこもその他の医療的ケア児も、症状やご家族の考え方は多様ですから、どうやら「正解の対応」というものはなさそうです。)

しかし出会いの直後に惟を看取ることとなり、何だかバタバタ時が過ぎてしまい……やっとこの度、2020年1月と2月の2ヶ月にわたって胡花ちゃんのご家族に取材できることとなりました。

2ヶ月といっても、感染症が心配な冬ですから、月に一度の通院の日に、病院でインタビューさせてもらいました。

つまり、6年間の胡花ちゃんの歴史を、たった2日間で取材し作文するという、無理矢理な感じのこの企画。

 

無理矢理なのは承知の上で、「18っこ 胡花ちゃんレポート2020――月に1度のある通院日――」というテーマでまとめました。

私の文章力とデジカメの写真でちゃんとお伝えしたいことを伝えられるのか、甚だ心配です。

しかし、ご家族の愛情を一身に受けすくすくと成長した笑顔の素敵な18っこ「胡花ちゃん」の日常を(ほんの一面ですが)垣間見ていただくことで、少しでも18っこへの認知が広がれば幸いです。

 

なお、以下の三点についてご承知おきのうえ、読みすすめていただければと思います。

  

  1. 18トリソミーは症候群ですから、患児の症状は一人ひとり大きく異なります。胡花ちゃんはあくまで「一例」です。もっと症状の軽い人も重い人もいます。
  2. ご家族の考え方も、あくまで「一例」です。全ての18っこや医療的ケア児のご家族が同じようなお考えをお持ちとは限りません。
  3. 今回の取材は、病院の広報室の許可を得て行ったものです。病院敷地内の写真撮影とSNSへの写真掲載には、病院の許可をいただく必要があります。

 

1.車移動(昼食①・人工呼吸器&酸素・パルスオキシメーター)

 

自宅から病院までは、自家用車で1時間半ほどかかります。

胡花ちゃんはカーシートに乗って、お父さんは運転、お母さんは胡花ちゃんケアをします。

午後1時に病院へ着くように出発し、車の中で昼食を摂ります。

親は軽食を片手に運転と胡花ちゃんケア。

胡花ちゃんは、「ラコール」を経鼻胃管にて「いただきます」。

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ラコールは写真の通り、点滴の容器のようなものに入れて車内に吊しています。少しずつ少しずつ。

18っこは「管」系が弱い子が多く、「食道」が弱い場合はごはんをお口から食べるのが苦手です。

だから胡花ちゃんのように、経鼻栄養の子が多いのです。

中にはペースト食をお口から食べられる子もいます。

胃瘻の子や腸瘻の子もいます。

 

それから、「気管」や「気管支」が柔らかい子も多いようです。

柔らかいから、通る空気の圧が低いと管が「ペちゃん」とつぶれてしまい、呼吸が苦しくなってしまいます。(風船を膨らませることを想像してみてください。)

そこで、人工呼吸器に酸素を繋ぎ、酸素の圧力を高めることで管がつぶれるのを防ぎます。

胡花ちゃんのように、常時CPAPシーパップ)療法を行う子もいますし、寝ている時だけ酸素を流す子もいます。

気管切開をして喉から空気を送り込む子もいます。

酸素の流量にも個人差があります。

胡花ちゃんの場合、酸素を1時間に7リットル流しているので、ボンベ1本を約40分で使い切ってしまいます。

したがって、酸素ボンベは移動中に1本使い切るので、こちらも車内で交換しておきます。

 

自宅では酸素ボンベは使いません。自宅ではボンベではなく「ホット」と呼ばれる酸素濃縮機を使っています。

これは、ちょうど空気清浄機のようなサイズで、電源コードがありますから、移動することはできません。

酸素ボンベはお出かけ用です。

 

そしてもう一つ、移動中にも必要なものは「パルスオキシメーター」です。これは経皮的酸素飽和度SpO2(エスピーオーツー)と心拍数を計るものです。

18っこは言葉で思いを伝えることができません。苦しくなっても「苦しい」とは言えないものですから、この機械が必要なのです。脈が速くなったり、動脈血中の酸素飽和度(「サチュレーション」と呼ぶこともあります)が低くなったりすると(健康であれば99%に近い値を示しますが、肺や心臓の病気により酸素を取り込む能力が低下すると値は低くなります)、「苦しい」のサインです。「パルスオキシメーター」は本体だけで7時間もちます。

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これがパルスオキシメーター。

本体からのケーブルを、胡花ちゃんの足に巻いたセンサーからでたケーブルにカチッとはめます。

低温火傷防止のために、入浴後反対の足に巻き直します。

本体の表示は、赤が酸素飽和度、緑が心拍。

実際に動かすとこんな感じでセンサーが赤く光ります。

胡花ちゃんは数値が悪いので、不安になる方がいるかも……というお母さんの配慮により、今回はお母さんの指で計測した写真です。

酸素飽和度98%。お母さん、健康です。

 

こんな感じで、胡花ちゃんは車の中では大体起きていて、足をばたばたさせたり、声を出したり、お母さんと遊んだりしてドライブを乗り切ります。

 

 

2.病院到着・降車

 

まずはお父さんが「カーシート(医療用チャイルドシート)」から、後部座席に固定している「バギー(外出用座位保持椅子・子ども用車椅子)」へと抱っこで移動させます。 

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酸素ボンベはバギーに1本取り付けてあります。

バギーをゆっくりとスロープから降ろします。

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後ろ向きで、ゆっくりゆっくり。これもお父さんがしています。 

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降りきったら、お母さんが安全ベルトを取り外します。

恐らくもっと複雑な手順があるのだと思いますが、私は見逃してしまいました。それほど手際のよいお父さんとお母さんでした。

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これで無事到着、降車完了です。

 

降車後はすぐにバギーを押して、病院内に入っていきます。

ここからは、他の患者さんがいらっしゃるので写真撮影はできません。

心の目でご想像ください。

 

ちなみに、胡花ちゃんが月に一度通うこちらの病院は、「倉敷中央病院」です。岡山県に二つある総合周産期母子医療センターのうちの一つです。(もう一つは「岡山医療センター」です。)

車いす用駐車場からは、屋根付きの通路を通って病院に入ることができます。

呼吸器は防水仕様ではないので、駐車場から建物までが「屋根付き」「段差なし」であることは、胡花ちゃん家族にとってはお出かけの必須条件ですね。

胡花ちゃんは「晴れ女」のようですが、ご自宅の駐車場からバギーを入れる動線には屋根がないので、雨の日の外出はとても難しいようです。

 

 

3.トイレ事情

 

2月の受診日は、到着後まず歯科を受診する予定でしたが、3階の歯科へ到着した瞬間にお父さんとお母さんが胡花ちゃんの排泄に気付きました。

歯科のフロアにはオムツ交換ができるような大きなトイレがありませんから、下階へエレベーターで移動です。

今回は、お父さんが歯科待合に残ってくださり、お母さんと胡花ちゃんに私が同行させてもらいました。

さて、現在体重14㎏、身長100㎝、足を動かすのが大好きで、寝返りもゴロゴロ移動も得意な胡花ちゃん。

(息子が胎児だった時に18トリソミーと診断を受けましたが、その時お医者さんからは「一生寝たきりの病気」と言われ衝撃を受けました。もしそのころに胡花ちゃんと出会えていたら、「18っこ=寝たきり」ではない!動きが激しいぞ!と希望が持てただろうな、と思います。)

体も大きく動きも激しいので、商業施設などでよく見る「多目的トイレ」や「ベビーシート付きトイレ」でのオムツ交換はなかなか難しいようです。

安心してオムツ替えができる条件として、

①バギーがトイレ(個室)に入り施錠できること、

②バギーから胡花ちゃんを降ろすベッドのような(ベビーシートよりずっと大きい)スペースがあること

が挙げられます。

この条件を満たした素晴らしいオムツ交換スペースが、倉敷中央病院の小児科外来付近に、一昨年頃にオープンしました。

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こちらがその写真です。お母さんによると、これが「理想的なオムツ替えスペース」なのだそうです。

広くて明るいですね。バギーも余裕で入りますし、向きを変えるのも楽々です。ベッドも大きく、安心です。

このようにバギーから降ろしてベッドに寝かせ、防水シートを敷いてオムツ替えをします。

オムツのサイズは、日中はパンパースのLサイズで、夜間はおやすみマンのビッグサイズです。

今回は少し服に漏れていましたので、お着替えもしました。胡花ちゃんは激しく動きますし、バギーに乗せている酸素や人工呼吸器がお鼻に繋がった状態でのオムツ替えとお着替えですから、なかなかの重労働です。

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着替え終わったら、再びバギーに乗せて終了です。

 

4.歯科

 

歯科に戻った頃には、もう診察の順番がきていました。

歯科ではいつもあまり待つことはありません。

診察診療時間は約10分間。

予防歯科という考え方です。虫歯になってしまうと治療が大変難しいので、虫歯にならないようにとても気を遣っています。

虫歯予防の一つとして、4~5ヶ月に一度、フッ素塗布をしていただいています。

現在胡花ちゃんは、下の前歯二本が永久歯。

5歳9、10ヶ月の時に、1本ずつ抜けました

18っこちゃんは、歯の生え替わりについても、個人差が大きいようです。

 

5.酸素交換と人工呼吸器

 

酸素ボンベはバギーに1本載せて使用します。予備を3本、リュックサックに入れて持ち歩きます。いつも手元に4本ないと不安です。命綱ですから。

車の中で空になったものと、歯科の後に空になったものとで、この時点で既に2本空になっています。

外出用の酸素ボンベは、もちろんレンタルです。

外出先でどんどん消費するので、病院であれば新しいものとどんどん交換していただけるのですが、病院ではない場所への「外出」の場合は、「TEIJIN」さんにお願いして事前に「外出」先の施設へ届けていただく必要があります。

 

命綱と言えば、もう一つの命綱である人工呼吸器もレンタルです。人工呼吸器は外部バッテリーと内部バッテリーを合わせて(持ち歩きのメイン器1セット、写真の状態で)12時間もちます。

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自宅にはサブ器が1セットあるので、災害時停電となっても、2セットを順次稼働すれば一応24時間まではもつ計算となります。(人工呼吸器がもっても、酸素が先になくなってしまうのですが……。)

 

先述の「ホット」も、こちらの人工呼吸器も、災害時の停電や避難となった場合のことを考えると、不安が大きいようです。

酸素ボンベは、毎週水曜日にTEIJINさんが自宅へ7本+災害時用の大きいサイズのものを1本届けてくれます。この7本が1週間の外出用ですから、よく考えて遣り繰りします。

 

余談ですが、人工呼吸器も最近お洒落にカスタマイズできるようになり、キティちゃん好きのお母さんとしては、胡花ちゃんケアの楽しみが一つ増えました。ほらかわいいでしょう。キティちゃんの呼吸器シールが3種類あるそうです。

 

6.リハビリ

 

4月から担当のリハビリの先生が、実は惟をみてくださっていた方でした。思わぬ再会に涙がこぼれます。他の患者さんがいらっしゃるので写真撮影はできませんが、取材は許可してくださいました。

まずはマッサージを念入りにしてもらい、本人のやる気次第で座ったり立ったりする練習をします。

「うたって おどって どうよう」という音の出る絵本を使ってリハビリの先生が注意をひこうとしますが、あまり乗り気ではない胡花ちゃん。

どうやら、お歌の選曲がお気に召さない様子。

「アイアイ」や「メリーさんの羊」では子どもっぽすぎるようです。

お父さんがスマホで「福山雅治」の楽曲を流し始めると、ノリノリでリハビリに精を出す胡花ちゃんでした。

他にも、「和楽器バンド」が好みのようです。

大人だ。

 

胡花ちゃんは、かなりの「お父さんっこ」です。

頑固なところのある胡花ちゃんですが、お父さんの言うことはよく聞きます。

ですから、リハビリ中にぐずった時はお父さんの出番です。

抱っこしたり、好きな音楽を流したり、激し目にあやしたりして、胡花ちゃんのやる気を引き出します。

 

通院してのリハビリは月に一回のこのタイミングで約1時間の実施ですが、実は自宅には週に一度来てくださっています。

これにはとても意味があるとお母さんは感じています。

リハビリをしていただくと、胡花ちゃんの体が緩みますし、ものを持つ、座る、思った方向に体を動かす、など、できなかったことが少しずつできるようになる度に成長を感じます。

4月から特別支援学校のピカピカの1年生になる胡花ちゃん。

本人の頑張りとリハビリの甲斐もあって、小学校入学の準備は整いつつあります。

楽しみです。

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こちらは、訪問リハビリの際の写真です。やはりお家はいいなあ、という笑顔でしょうか。

リラックスした様子が、胡花ちゃんの表情から伝わってきます。

家用の座位保持椅子に上手に座っていますね。

シートの色や模様は、主にお父さんが選んでくれたそうです。

 

7.レントゲン

 

1月の受診の際は、リハビリの後に「年に一度のレントゲン撮影」がありました。

(いつもはここで「歯科」です。)

「隠れ骨折」や「側湾」がないか、調べてくださいます。

今年も大丈夫だったようです。

 

8.処置室(酸素交換・電源確保・昼食②)

 

病院内でも少しくつろげるのが、小児科外来の片隅にあるこの「処置室」です。

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小児科に到着して受付をし、身長と体重を測ったら、予約の時間より早くても、酸素の残量が心配なのでなるべく早くこの処置室へ向かいます。

早速、残り1本まで減っていた酸素ボンベを全て交換してもらい、一安心です。

また、パルスオキシメーターや人工呼吸器についても、処置室のコンセントに繋いで電源を確保ができますから、バッテリーの残量を心配しなくてすみます。

 

「少しくつろげる」理由は、「荷物を置ける」「胡花ちゃんをバギーから降ろせる」「カーテンを引ける(半個室)なので気兼ねなくオムツ替えや注入ができる」ことでしょうか。

荷物がとにかく重いのです。人工呼吸器は胡花ちゃんの体重ぐらいあります。酸素ボンベは、常時持ち歩く4本中3本はリュックサックに入れているのですが、私がもたせてもらった時は、ボンベが重すぎて何と指が切れて出血してしまいました……。

お父さんが力持ちなので軽々持ち運ばれているように見えますが、これは大変だなと思いました。

 

処置室内のベッドで少しまったりできたところで、次はごはんです。

胡花ちゃんはごはんをゆっくり注入しなければなりません(胃瘻をしていないので、経鼻で一気に注入すると吐き戻しの心配があります)から、小児科の診察の待ち時間(30分~1時間程度)は「ずーっとごはん」です。

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ごはんは、こんな感じで保冷バッグに小分けにして準備しています。

巨大な注射器のようなものがシリンジ。1回分をセットしておきました。

お父さんがゆっくりマーゲンチューブから注入していきます。

家から病院までの間に、自家用車内で注入していたものの他に、このシリンジのものと、さらにオレンジ色のポットにも準備しています。

ポットから紙コップに移して、シリンジで吸って注入します。

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この写真は病院でのリハビリの写真です。

(私は撮影できませんが、お母さんは撮影できますので、その写真をいただきました。)

病院でのリハビリ中は、CPAPという鼻を覆うマスクを外してカニューラという鼻に直接空気と酸素を送るものに付け替えていましたので、マーゲンチューブとそれを留めているシールがよく見えるかなと思い、こちらの写真を使いました。

ほっぺのところにシールで留めているのがマーゲンチューブ(経鼻胃管)です。

シールに絵(この日はお母さん作・ネズミさんでした)を描いておしゃれをしたり、この写真のように雲の形(はがれにくいようです)に切って貼ったりします。

 

胡花ちゃんは、2歳半ぐらいでミルクを卒業し、ラコールを水に混ぜた食事に変更しました。

ラコールが体に合っていたようで、便秘が軽くなりました。それでも、今も浣腸は毎日しています。

18っこの便秘を甘く見てはいけません。腸閉塞は、文字どおり命取りになってしまいます。

この日も、処置室のベッドの上で、このタイミングで浣腸をしました。

もちろんオムツ替えもこの処置室のベッドでできます。

 

9.小児科

 

何と、ドクターが処置室にきて診察してくださいます。

ありがたいことです。

そして何と何と、診察は早い時は5分ぐらいで終わります。

血液検査も心エコーも、特にありません。

この1ヶ月間変わりがなかったかという問診と、聴診器での診察、次回の予約、薬のお願いなどです。

胡花ちゃんは、往診医のいない地域に住んでいます。

片道約2時間かけて、お父さんが仕事を休んで家族で受診していますが……診察は5分……6年間で先生との信頼関係もできていますし、インフルエンザや新型コロナなど受診のリスクも高いわけですから、

在宅でのオンライン診療が認められる日が待たれますね

 

 

10.医材購入

                                                                                                   

下の「11」で受け取る「薬と医材」とは別に、現金で購入する「薬と医材」というものがあります。

支給されるシリンジやチューブだけでは足りないので、どんなにお金がかかっても望むだけほしいと思っています。

全ては命に直結しますから。

1月の医材はこのような感じです。

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左の写真が病院から支給される医材で、右の写真が自費で購入した医材です。

 

 

11.薬と医材の受け取りと会計

 

薬と会計の準備ができたら、処置室へ知らせてくれます。

(薬と会計の窓口は別です。)

 

毎月、こんなにたくさんの薬を受け取ります。ラコールなどの栄養、トリクロリール

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などの内服薬や外用薬。受診は月に1度なので、もらい忘れは許されません。

とても気を遣います。

 

12.帰路

 

一日がかりの受診も、これにて終了。

バギーを車に乗せて、胡花ちゃんをバギーからカーシートに移し、帰路につきます。

復路は往路との交代で、お母さんが運転、お父さんが胡花ちゃんの付き添い要員となります。

 

「とにかく毎回ぐったり疲れる」というのがお母さんとお父さんの感想です。

移動中の急変に備えて、常に神経はぴりぴりしています。小さい頃(2歳頃まで)は、起きている時でも無呼吸の発作があったため、今でも移動には大人二人が必要です。

一人は運転手、もう一人は発作時に刺激をし(「息をして!!」と体を揺すって)、それでも駄目ならアンビューバックを押さなければならないからです。

これまで、実際にアンビューを押したことは何度もあります。

片道1時間半、準備も入れると片道約2時間。リハビリ、歯科、小児科というのが大体お決まりのコースですが、正直に言うと疲れるのです。

 

13.まとめ

 

胡花ちゃんは、6年前にこの倉敷中央病院で生まれました。

約4ヶ月間、こちらのNICUでお世話になり、(GCUや小児病棟への入院を経ることなく)NICUから直接退院しました。

しかし、退院後の環境の変化に耐えられず、体調を崩し、すぐに救急車で戻ってきました。

戻ってきたといっても、一度退院したらNICUには戻れないのがルールですから、このときに胡花ちゃんは2週間の小児科デビュー入院となりました。

再びの退院後は、2週間に一度の受診、3週間に一度の受診と徐々に間隔を延ばしていき、1歳の誕生日を迎える頃には、現在のように1ヶ月に一度の受診スタイルに落ち着きました。

今でも時々入院することはあります。

初めての夏は、水分不足で入院しましたし、インフルエンザに罹って入院したこともあります。大体1年半に1回ぐらい入院しています。

去年の夏も入院しました。

それでも「赤ちゃんの頃に比べると、随分強くなった」と、数々の困難を乗り越えてきた娘を、お父さんもお母さんも誇らしく思っています。

 

「はじめに」に書きました「A:18っこの日常」については、なんとなくおわかりになりましたか。

ただ、「B:18っこや医ケア児に出会った時の対応」については、どうでしょう。

なかなかデリケートな問題ですよね。

興味本位で無遠慮にジロジロ見られるのは失礼だと感じますし、あえて避けられるのも悲しい。

受け止め方は人それぞれなので、正解はなさそうですが、エレベーターで乗り合わせた時は、開閉ボタンを押し先に出ていただくといった、自然な対応で良いのではないでしょうか。

お父さんもお母さんも、しっかり準備して外出されているため、通りすがりの方に手伝ってほしいことがたくさんあるわけではありません。また、緊急時など困った時は「助けてほしい」と声をあげられるでしょう。

ですから周囲の方は、身構えず自然にできることをすれば良いのだと思います。

 

18っこは「管系」が弱い子が多いため、それを補うためにいくつかの「管」が体についている場合が多いのです。たとえば、「胃管」や「人工呼吸器(+酸素)」など。それが一見痛々しく見えることもあります。

しかし、それらは生きるために必要な管なのです。

また、18っこは成長も発達もゆっくりです。体がとても小さくて新生児に見えても1歳だったり、ねんねの赤ちゃんに見えても3歳だったりします。

また殆どのお子さんが心疾患を持つためか、体がとても痩せているケースも多いようです。

わが子が生きるための処置や、わが子の成長について気にされている親御さんもいらっしゃいますし、実際に外出先で

「まあかわいそうに」

「生まれたばかりの赤ちゃんを連れ回したら駄目よ」

「どうして顔に色々付いとるん?」

「この子痩せとるけどちゃんと食べさせとるんかな」

といった言葉をかけられて傷ついた方もいらっしゃいます。

 

そして、18っこは感染症にとても弱く、ちょっとした風邪や下痢が原因で入院治療となり、命に関わることがあります。

したがって、いくら仲良くなりたいからといって、消毒をしていない手で突然お子さんの体に触れるのはやめましょう。

 

悪気なく口から出た言葉や、親しくなろうとしてとった行動が、時には相手を傷つけることもあります。

先ほど「自然に」と書きましたが、たとえばベビーカーに赤ちゃんを乗せてお散歩している親に、通りすがりのあなたは突然「小さくてかわいそうな赤ちゃんですね」なんて言わないと思いますし、消毒していない手で親の許可もなく赤ちゃんに触れないと思います。

きっと「自然に」笑顔で「かわいい赤ちゃんですね」と言うのではないでしょうか。

「自然に」というところにだけ注意すれば、私たちはお互いに仲良くなれるのではないかと思います。

 

以上、「18っこ 胡花ちゃんレポート2020――月に1度のある通院日――」でした。

いかがでしたか。

 

たくさんの笑顔で「幸せだよ」と教えてくれる胡花ちゃん、快く取材に応じてくださった胡花ちゃんのお父さんお母さん、取材を許可してくださった倉敷中央病院広報室様、そしてレポートを最後まで読んでくださった読者の方に、心より感謝申し上げます。

本当にありがとうございます。

 

「HOME18岡山」では、メンバー間の交流やピアサポートだけでなく、SNSを通じた今回のようなメンバーの紹介や、地域の方々との直接的な交流の場を設定し、「まずは『18トリソミー』を知っていただくこと」から活動を続けていきます。

多様な私たちの誰もが暮らしやすく、生きやすいヨノナカを目指して。

 

皆さまのご意見ご感想をお待ちしています。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「HOME18岡山」

18トリソミーのお子さんと、そのご家族のための任意団体。

お子さんが18トリソミーなどの染色体異常の診断を受けたご家族の思いに耳を傾け、家族間、医療の現場、地域社会との橋渡しとなる場を岡山に作ります。

いろいろな方に関心を持っていただけるように、活動していきます。

 

メール……home18okayama@gmail.com

Facebook……https://www.facebook.com/home18okayama/

 

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2019年12月から、病院などに置かせていただいています、「HOME18岡山」のチラシ第1弾です。