「HOME18岡山」のブログ

 18トリソミーなど染色体少数派の子と、家族と、ゆかいな仲間たちの岡山会です。

てんでまんで読書会②『ぼくのおじさん』@ヨノナカ実習室3/20

ブログ前半では、読書会の様子をご報告します。

 

「ヨノナカ実習室」と「HOME18岡山」がいっしょに開く読書会。

テーマは前回に引き続き、「生きるについて考える」です。

第2回の今回は、アーノルド・ローベル 作  三木卓 訳『ぼくのおじさん』をてがかりに、ヨノナカ実習室のスミさんの案内のもと、参加者一人ひとりが自由に思いをめぐらす時間となりました。

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参加者のフジタマユさんによる絵。第1回に引き続き、引き受けてくださいました。

 

 

今年はオフラインに加えてオンラインでの参加も可能となり、また会場の参加者とオンラインの参加者が温度差を感じないように、ヨノナカ実習室のスミさんが丁寧に準備してくださいました。

試行錯誤のセッティングの結果、ヨノナカ実習室は写真のように、まるで映画館状態となりました。

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オフライン会場でもスマートフォンをモニターとして使用し、オンライン画面を三分割するという試み。

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分割されたコマの中に3人ぐらいまでの家族単位が映し出されているので、会場とご家庭との温度差がなくなったように思います。

ご家庭からは、お食事中だったり、お母さんに抱っこされていたり、きょうだいも登場したりするなど、とても暖かくにぎやかな感じが伝わってきます。

もちろん、お一人で参加されている方も見えます。

 

まず、案内人のスミさん(ヨノナカ実習室)が

 

「話したくないことは無理して話さない」

「自分の内側に出てきたことばを大切にする」

「沈黙も大切な時間と考える」

 

という大切な約束を共有するところから、読書会ははじまりました。

 

暖かくにぎやかな雰囲気とはいえ、お互いに初対面の人が多く、少し緊張しながら始まった読書会です。

冒頭で、私から簡単に「18トリソミー」や「HOME18岡山」の説明をしましたが、実際に18っこや13っこを画面上で目の当たりにして、ドキドキした方もいたと思います。

 

しかし、音読後の最初の発言の場で、オンライン参加のライちゃん(13っこ)のママが

 

私は、おじさんが「ぶおおおん!」と「たからかにほえ」て、「よあけをかんげいしている」ところがすてきだと思いました。

ライちゃんに使っている吸引器の音もすごく大きくて、今朝も「ぶおおおん!」と鳴っていたのです。少し似ているなあと思いまして。

 

と口火を切ってくださいました。

途端に参加者(特に当事者でない人)の表情は、「ハテナマーク」になりました。

 

……吸引器ってなんですか?

 

するとライちゃんママは、画面上でニコニコとご機嫌なライちゃんの喉元を示して、説明してくれました。

(ライちゃんは呼吸が楽になるように、気管切開をしています。)

 

  ここのところは「人工鼻」といいまして、痰などを「ぶおおおおん!」と吸引器で吸って、いつも清潔にしています。清潔にすると、この人も気持ちが良いのです。

  

あっ!そうか!ライちゃんが今朝もお母さんに「人工鼻」をきれいにしてもらったのと同じように、「おじさん」(ぞうさん)も「長い鼻」を「ぶおおおおん!」と鳴らして、今日も気持ちのよい朝を迎えられたことを喜んでいるのかも!?

おおお~。

すごい発見だ。

「ソウがほえる声」と「吸引器の音」、「愛する息子の喉の人工鼻」と「ゾウの長い鼻」を関連づけるなんて、こんな読み方、誰にもできなかった!

 

このライちゃんママのユニークなことばのおかげで、すっかり場が打ち解け、その後は一人ひとりがどんどん自分の思いを口にできるようになっていったのでした。

グッジョブ、ライちゃんママ!

 

参加者の皆さんの発言をご紹介したいところですが、この素晴らしい絵本をまだ読んでいない方のためには、あまり詳しく示さない方が良いのかなぁ……と思い、自粛することにしました。

私自身の覚え書きとして、キーワードだけ並べさせてください。

 

しわ

ランプ

くも(蜘蛛)

はな(花)

子どもらしいふるまい 距離感

つきのひかり

ぎしぎし → 老い 弱み

わらい → 慰め 励まし

かぞえる ―― か そえる

へやのドア ―― 心のドア

ときどき あおう ―― 終わりではない 約束

……

 

こちらの写真は「おじさん」の「しわ」を模写しているところ。

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小さい人も、大きい人も、岡山の人も、全国各地のオンラインでつながる人も、てんでまんでに「しゃっしゃっ」と筆記用具を動かし続ける不思議な時間。

録画したオンライン動画を後日確認すると、この時、虎くんもお母さん・お父さんといっしょに楽しそうに手を動かしていたのが見えて、しあわせな気持ちになりました。

 

前回のヨシタケシンスケさんの『もしものせかい』のときも、細い筆記用具で真っ黒に塗りつぶされた、狂気すら感じる1ページに参加者の心が揺さぶられました。

今回、アーノルド・ローベルさんは、なぜ登場人物を「ぞうさん」にしたのか?(がまくんやかえるくんではなく……。)

やはり象ならでは「しわ」が決め手だったのでは?

ローベルさんは何を思いながら一本一本時間をかけてしわを書き込んでいったのだろう?

そんなことを考えながら、模写した人もいたようでした。

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作・きよちゃん(会場参加者)

スミさんとしては、象に見えない「こっけいな」絵を見せ合って、みんなで「わらう」時間を想定していたようなのですが、皆さん絵がうますぎて感嘆の声があがっていました。

 

読書会の最後には、参加者の虎くん(このブログにも以前登場している「18っこ」。小学校卒業目前に読書会へ参加され、この4月には中学生1年生になりましたから、もはや「18さん」!?)のお父さんが、微笑みとともに驚きの「新解釈」を静かに言い残して画面上から退出される(!)など、温かい雰囲気の中で刺激的な発見のある、豊かな読書会となりました。

 

また、写真には撮れませんでしたが、会場の小学生3人はリラックスしすぎて、最後は全員が寝そべってゴロゴロ。

オンライン画面に自分たちのおしりをうつして楽しんでいました。

その様子を見て、「ああよかった、読書会、大成功!」とホッとした私です。

楽しかったね。

 

 

さて、ブログ後半は、ちょっとだけ裏話をさせてください。

 

ちょうど1年前の3/14には、まだ立ち上げたばかりのHOME18の初企画ということで、第1回の読書会を開きました。

 

そのころの私は「当事者が集う『懇親会』」と「家族や関係者、興味を持った人が集う『読書会』」は別々に開催しなければナラナイ!と思い込んでいました。

それは、医療的ケア児である場合が多い18っこや13っこたちが集えるような、バリアフリーで屋根付きの駐車場があり、酸素や電源の心配がいらない、まるで病院のように安全な会場を安価で手配できるとは思えず、1月、2月に地域の複数の病院と交渉してもうまくいかず、さらに2月頃からはコロナ禍の足音が聞こえはじめていて、感染症には特に注意しなければならない当事者と顔を合わせる会を開くことなど考えにくく、「お手上げ」状態だったからです。

 

こりゃあ、みんながいっしょに集うには時間がかかりそうだなあと、途方に暮れたことを思い出します。

しかし同時に「地味に続けていけば、いつか……10年後ぐらいには、当事者もいろんな人も、みんなが集える読書会がきっと開けるだろうから、とにかく何らかの形で続けていきたい」と思ってもいたようです。

(昨年の第1回の反省会でスミさんと話し合った時のメモには、そう書いていました。)

 

そこからコロナ禍の1年間。

当事者間の懇親会をオンラインで行ったり、SNSで情報交換をし合ったり(コロナ禍で消毒液や蒸留水などが品薄となり不安になりました)、地元の高校で映画『うまれる』の上映会を行ったり、18トリソミーの虎くんファミリーと映画を観た高校生との対話の会(オンライン)を開いたりと、手探りで文明の利器を使いながらの地道な活動となりました。

そして迎えた第2回の読書会は、なんとなんと「主催者と当事者(18っこや13っこ)、家族(親・きょうだい)、関係者、興味を持った人」つまり「いろんな人」がいっしょに語り合う、素敵な会になっていたのです。

「10年後ぐらいにこうなるといいなあ」と思っていた夢が、1年後にはやくもかなってしまい、こんなにしあわせで良いのかな?と感じるほど感慨無量でした。

 

オンライン参加の当事者と家族の皆さま、オン・オフラインで参加の「興味を持ってくださったいろんな」皆さま、読書会、楽しかったですね。

ご縁あって出会えたことを、とても嬉しく思います。

また皆さまと、そして新しい方々とお目にかかれる日を、心から楽しみにしています。

 

お互いに、それぞれのくらしの場で、だれかの「おじさん」的な存在になれますように。

 

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「HOME18岡山」は、診断を受けたご家族の思いに耳を傾け、家族間、医療・福祉の現場、地域社会との橋渡しをすることを目指しています。

いろいろな方に関心を持っていただけるよう、少しずつ、ゆっくり活動しています。

 

「HOME18岡山」では、引き続き当事者を募集しています。

当事者とは、18・13っこファミリー、プレファミリー(妊娠中の方)、子を亡くしたファミリー(流産・死産の方も)のことです。

 

また、このブログでは18トリソミーの子どものことを「18っこ」と表記しております。
18っこへの愛を込めたのはもちろんのこと、「18トリソミー、18モノソミー、フル、モザイクを問いません。」という思いをお伝えしたくてこの表記にしました。
また、症状や治療に関する医療の歴史がよく似ている「13トリソミー」の子どもたちやご家族とも繋がりがあります。

この辺りの考え方を勘案された上で、「『HOME18 岡山』に何か協力しても良いかな」とお思いになった18っこ・13っこファミリーや、医療・福祉関係者の皆さまからのご連絡も、随時お待ち申し上げております。

 

活動につきましては、「したい人が、できる範囲で無理なく続ける」「来るものは拒まず、去るものは追わず」という緩やかな姿勢で取り組んで参りますので、お気軽にご参加いただき、お力をお貸しいただければ幸いです。

 

当事者や医療・福祉従事者の方にも、そうでない方にも、幅広くさまざまな方に興味を持っていただけると嬉しいので、今後も当事者限定の「懇親会」だけでなく、オンラインも活用したオープンな「読書会」を企画していきます。


そして、イベントに関わらず、さまざまな方からの連絡をいつもお待ち申し上げております。

 

連絡先→

 

home18okayama@gmail.com

 

いただいたメールは私が拝読いたします。

 

文責、惟母。